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2006/05/24

「共謀罪」の背景とその企図

昨日に続いて共謀罪の狙いについて“共謀”するエントリーとなった。
以下は、共謀罪に危惧を抱く一市民の方が示す分析である。紹介しておきたい。

「共謀罪」の背景とその企図

1)日本における、いわゆる「共謀罪」は、あらゆる集団や団体を虞犯集団として監視し管理することを目的としているが、それを要請した「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」は、一見、犯罪集団の犯罪収益と財産の凍結・没収などを行うことによって、犯罪集団の活動を制限するように見せかけている。しかし、この条約は何処に主眼がおかれているのか分からない曖昧な構成になっており、この曖昧なところが如何様でも取締の対象を拡張出来るという危険性を秘めているものである。真の目標は、実に広範な世界の組織を対象にして監視・管理の下に置き、活動を抑え込もうとしているところにあるようだ。その曖昧な条文の隙間を読みとると、「国連国際組織犯罪防止条約」は、先進国の中でもとりわけアメリカと多国籍企業のために、取り決められた条約であり法律だということが浮き彫りになってくる。
ではなぜ、このような狙いを条約の形で実現しようとしたのか。それは歴史的経緯を辿ると明らかになる。

2)米国は1980年代、新自由主義経済・市場至上主義を「ワシントン・コンセンサス」としてまとめ、対外政策として実施することを決定した。それは以下の10項目である。
①財政の規律 ②公共投資を利益率の高い分野に向ける ③税率を低くし課税対象を拡げること ④為替レートを競争させること ⑤金利の自由化 ⑥貿易の自由化 ⑦直接投資の自由化 ⑧民営化の促進  ⑨規制の撤廃 ⑩財産権の確保
*米国は、この政策を支配するIMFや世界銀行などの国際機関を通し、世界諸国に指導という名目で押し付けてきた。
この「ワシントン・コンセンサス」は、米国の国益を利すると共に、金融機関や投資銀行そして多国籍企業の利益追及を有効ならしめる政策でもあった。
さらに、この「ワシントン・コンセンサス」を制度化するために、95年頃から密かに「MAI協定」として条約化してこれを世界諸国に押し付けることを企図して検討を重ねてきた。
98年、この「MAI協定」条約は締結寸前にその内容が漏れ、その危険な内容に気づいた人々によって反対の声が上げられ、フランス政府がその声に同調して不参加を表明したことで、この「MAI協定」は凍結された。

*「MAI協定」の主要点
1、多国籍企業は、事実上、国民国家それ自体のそれに等しい法的地位を現地関係国において認められること。その上、「Standstill規定」により、関係国政府は、MAIの規定を侵すような法律を将来成立させることはできないこと。
2、関係国は多国籍企業に対し、広分野にわたり「履行要請」を課すことが禁じられる。例えば現地住民の雇用割合やジョイント・ベンチャー要請などが、それに当たる。
3、「Takings Rule・取得規定」により、関係国政府は「十分の保障」や「妥当な公共目的」なしには、多国籍企業の投資による運用や自国への還流に干渉することは認められない。「収用と同等」の場合を含むみ、たとえば多国籍企業にとり負担増を意味するような公害防止法の適用はtakingsと見なされる。
4、国が「MAI協定」に加盟した場合、「Rollback Clause」規定により、その国はMAIが規定している投資関係の準則にもとるような法律や政策の類を2、3年のあいだに撤廃することに同意する。
5、国が一旦この「MAI協定」に加盟すると、「Lock-in Provision」の規定により、少なくとも20年間は事実上抜け出すことは禁じられる。

*この「MAI協定」の主眼は、国家主権の上位に多国籍企業の権限が付与される、という恐るべきものだったがひとまず凍結された。
その思想は、米国とアフリカの一部の国との間で条約として実現している。それが以下の協定である。
*「アフリカの成長と機会のための法」(米国とアフリカ諸国が条約を結ぶ際の基準)
* 適格国の11要件の抜粋。
1) アメリカ合衆国とサワラ以南アフリカとの間の財貨サービス及び生産要素の自由移動の促進。
2) 市場への政府介入を最小限にし、民営部門の成長を支持すること。
3) 接収計画を立てて、政府管理下の企業の民営化を奨励すること。
4) 投資に対する制約を取り除くこと。
* このアメリカのためのクリスマスツリーといわれた条約は、IMF及びその他の国際的金融機関のプログラムや義務事項を、どの程度まで遵守しているかが考慮されることになる。

3)それより先、南米諸国では「新自由主義的な市場至上主義経済」政策の導入が強要されたために、経済は疲弊し、格差が広がり、雇用が不安定化したために繰り返し暴動が起こった。これは国際金融や多国籍企業、IMFや世界銀行にとっては好ましいことではなかった。

4)WTOもFTAも「ワシントン・コンセンサス」が基準とされており、それを押し付けようとする先進国に対し発展途上国などは苦々しいいものと受け取っていた。その反目が99年にシアトル開かれたWTOの会議で、後進国と市民団体が結びつく形での反対運動が噴出し、協議は成立しない事態となったのである。これは新自由主義経済を推進しようとする先進国にとっては、許容できない事態であった。

5)これらの抵抗による障害を除去することが、先進国の中でも米国や国際金融機関、投資銀行、多国籍企業、世界銀行、IMFなどの重要な課題となっていたのである。そのために一方でFTAやWTOの制度の推進強化を図るとともに、後進国の反対の意思を削ぐこと、反抗的な市民団体や労働者の組織を含むあらゆる組織、場合によっては国家そのものの弱体化および壊滅を企図したのである。

6)このような経緯からすれば、この日本における「共謀罪」は多少の手直しによる緩和策は全く意味をなさない。新自由主義的経済政策を受け入れるかどうか、従順な良質な集団であるかどうかが判定基準であり、それに疑いを示したり反対する集団は「組織的犯罪集団」だとされるのである。

7)国際資本や多国籍企業にとっての犯罪集団の行動を抑制し、場合によっては潰すことを目的とし、行為を起こす前の「共謀」の段階で捕捉し、犯罪者として拘束し、犯罪者として処罰する。これが「国連国際組織犯罪条約」の目的であり、「共謀罪」の真の狙いなのである。

8)日本には「国連国際組織犯罪集団」の立法行為は存在しないにもかかわらず、この国会で「共謀罪」を成立させようとしている政府与党は、アメリカに従属し、多国籍企業や国際金融機関に奉仕するための集団であり、反日本的、反国民的集団だと言える。

9)日本国民にとっては悲劇性を帯びている「共謀罪」の制定に狂奔する政府与党の議員たちは、歴史によって民主主義の破壊者、反国家的集団として断罪され、さらに超大国や多国籍企業に奉仕した狂言回しとして批判されることになろう。

10)一方、この「共謀罪」が危険性は、時の政府や治安機関によって際限なく拡張して適用されるところにある。この法律が制定された日本の行き着く先が「警察国家」になる、というのはこのような意味である。

11)幸いなことに、この「国連国際組織犯罪防止条約」は、重大な犯罪、麻薬や銃器および人身売買などの犯罪による収益や財産の凍結・没収などしか明文規定をしていない。従って、条約に沿った法案策定を越境・跨国犯罪に限定することは可能である。平成の「治安維持法」などといわれる悪法を制定するのではなく、対象犯罪を限定した法律を制定するべきであろう。

12)「国連国際組織犯罪防止条約」はどのようにでも使える危険な条約であり、それを最悪の形で実現しようとしている「共謀罪」のような悪法成立には手を染めないよう、政府与党に要望する。

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